WWⅡ米軍レーションの一つである”Dレーション”(リプロ品)のミニレビュー



さて今回は今までのように現用のレーションではなく古いレーションを取り上げます。今回取り上げるレーションはDレーション(D-Ration 通称Dバー)と呼ばれるもので、米軍が第二次世界大戦中に使用したレーションの一つです。このレーションがどのようなものなのかは他で詳しく解説されていますので、詳細は解説せずに簡単な説明を写真とともにしていきます。

概要

これがDレーションです。このレーションは非常食の立ち位置(今だとデイトレックスや救難食糧になるのでしょうか)になっており、高カロリーのチョコレートバーで高温でも溶けないように耐熱性が重視されています。ですが本来は非常食のため普通のチョコレートのようにお菓子として消費しないように風味を落としてあり(耐熱性を重視すると風味が落ちるというのもあります)、時期は不明(開発段階?)ですが意図的に風味を落とすために少量の灯油を添加する試みがなされていたことがあるそうです。開発は第二次世界大戦勃発前から始まっているレーションです。バリエーションなどの詳細についてはこちらで詳しい解説がされています。

パッケージを拡大したところです。表記から分かるようにそのまま食べることもできますが、お湯で溶かして飲み物とすることも可能です。ビタミンB1(チアミン塩酸塩)が入っているのは脚気防止のためです。このレーションの重量は4oz(約113g)で、他に2oz(約56g)のものがあります。4ozのものは単体(1個が1食分)で使用するもので、2ozのものは他のレーションの中に入っています(単体での使用はなかったと思いますが詳しくは分かりません)。2ozのものは後にトロピカルバーとなります。

このレーションの裏側です。裏側には何も記載されていません。このDレーションは海外製のリプロ品(再現品)でビタミンB1(チアミン塩酸塩)が入っていない以外は当時と同じレシピ・材料で作られているようです。実物は所持していませんが写真を見た限りでは実物と見間違えそうな程の完成度で驚きました。

レーションの長辺の側面です。製造メーカーはハーシー社と記載されています(Dレーションは他社でも製造されています)。ハーシー社はDレーションの後もトロピカルバー、デザートバーを開発していきますが、今では軍用チョコレートを製造していません。ですがレーションにチョコレートバーを入れるというアイデアはFirst Strike Barや兵士の燃料(Hooah!バー)Performance Readiness Barなどに受け継がれています。

レーションの短辺の側面です、湿気や毒ガスなどを防ぐために黄色っぽいワックスでパッケージがコーティングされていることが分かります。コーティングはベタベタではなく、蝋に似た感触です。

First Strike Barと比較したところです。Dレーションの方がパッケージが厚みはありますがコンパクトにできており、内容物の重量もあります。これを見ても運用方法の違い(非常食か副食か)がよく分かると思います。First Strike Barは低温だと硬くなって食べられなくなりますが、Dレーションはどうなのでしょうか。



開封と実食

では早速開封して中身のバーを見てみましょう。ワックスでコーティングされているためか紙箱のパッケージが開けづらかったので、カッターナイフを使って開封しました。当時はどのようにしてパッケージを開封したのかが気になります。

紙箱のパッケージを開けて中身を取り出したところです。プラスチックのフィルムで包装されています。実物はセロハンのフィルムです(セロハン以外の包装が実物にあるかどうかは分かりません)。

フィルムの皴を伸ばしたところです。マチがないタイプの包装なので開封するのが大変でした。実物はマチがあるタイプの包装で開封しやすそうですが、マチがないタイプの包装が実物にもあるかは分かりません。

プラスチックのフィルムを取って中身を出したところです。形状は実物同様で普通の板チョコと同じく細い溝があり、6つに分割できるようになっています。触った感触はパッケージのコーティングと似ていますが、こちらの方が少し油分を感じます。見た目はチョコレートなのに触っても溶けてベタベタにはならないので妙な感じです。

裏側です。余談ですが実物ロ号飯盒(昭和17年 那須アルミ製)の中子にバーを載せています。シチュエーションとしてはありえなくはない...と思います。

側面から見たところです。バーの厚みに対して溝がかなり細く浅いです。このバーの性質を考えると本来の溝の目的である冷やしやすくしたり型から取り外しやすくしたりする他に、分割しやすくする目的もありそうです。それを証明するかのように写真のように綺麗に割ることができました。

では早速食べてみましょう。バーを割るにはかなりの力が必要で、私は手を痛めてしまいました。普通の板チョコでは得られない経験です。バーもかなり硬いのだろうと覚悟して口にすると、意外にも現用のヨーロッパのレーションに入っているビターチョコレートのような食感で割と食べやすいです。ビターチョコレートも油分が少ないので同じような食感になるのだと思いますが、ビターチョコレートと違うのは原材料から見ても分かるように脱脂粉乳やオート麦粉が使われているため粉っぽい食感もあることです。油分が少ないので低温になってもこれ以上硬くなることはなさそうです。甘さはM&Mのように甘すぎるものではなく、かと言ってビターチョコレートのように甘さがないものでもない丁度良い甘さです。ですがオート麦粉が入っており1かけらの量が多いためか1かけら食べただけでお腹がいっぱいになってしまいます。個人的には可もなく不可もなくといったところですが、一度に全部食べると飽きてしまいそうです。現用のチョコバーとDレーションがあったら現用のチョコバーを食べると思います。

バーの断面を拡大したところです。見るからに粉っぽい見た目で、これを見てもDレーションが普通のチョコレートとは大きく異なっていることが分かると思います。

総評

今回は古いレーションであるDレーション(リプロ品)を紹介しましたが、同じ非常食であるデイトレックスや救難食糧と比べると設計が古いためか飽きが早く連食には不向きであるという印象を受けましたが、非常食の条件である保存性の高さや高カロリー、喉が渇きにくいといった条件を満たしており、時代を考慮して考えるとかなり先進的な非常食と言えます。ですがこれは本来の目的である非常食での話で、MREのように運用したり嗜好品が全てこれになったりすると評価は下がると思います。副食としては現用のチョコバーの方が良いと思います。今回食べたのはリプロ品で当時のものとは味が違っているかもしれないというのも頭に入れた方が良いと思いますが、かと言って実物だと劣化しているのは明白なので難しいところです。

次回からは缶詰のレーションであるCレーションのBユニット、MCIのB-1ユニットとミニレビューをしていこうと思います。

スポンサーリンク





シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク